健康な子どもを育む小児科医としては、家族が健康・健全であってほしいと願います。私は、究極の健康とは子どもの頃からのアンチ・エイジングだと考えます。それを「オプティマル・ヘルス(最善の健康)」とも呼びます。これを実践するには、どうしたらよいでしょうか?
見た目のアンチ・エイジングというと、どのようなことをイメージしますか? 抗加齢の世界では3つに分けていきます。体型、容貌、皮膚です。第3回目の連載では、シワとくすみを減らすミネラルのお話をしていきます。
皮膚のアンチエイジングに効くミネラルをご存知ですか? それは「亜鉛」です。「亜鉛」は、抗酸化物質の一部として大切な役割をもちます。そのため、シミ・シワを作る酸化ストレスを減らします。それでは、なぜ亜鉛が皮膚の若さを保つのに必要なのかを、紫外線の話をしながら紐解いていきましょう。
紫外線には「長波長紫外線UVA」と「短波長紫外線UVB」があります。
【短波長紫外線 UVB】は、NADPH oxidaseを活性化させます。
その結果、活性酸素種ROS【・O2- スーパーオキシドアニオンラジカル】を細胞内で作ります。
一方、【長波長紫外線UVA】は、【・O2-スーパーオキシドアニオンラジカル】に加え、【1O2 一重項酸素】を作り出します。前回勉強した活性酸素種ROSを2種類も作ります。そのため、UVBよりもUVAの方が悪者と考えるとわかりやすいと思います。前回勉強した活性酸素種ROSを2種類も作ります。そのため、UVBよりもUVAの方が悪者ということですね。
さて、ここでは活性酸素種ROSの一種である【1O2 一重項酸素】に的を絞ってみます。1O2 一重項酸素はどんな悪さをするのでしょうか?
【1O2 一重項酸素】は、皮膚の脂であるスクワレンや不飽和脂肪酸を酸化させ【脂質ヒドロペルオキシド LOOH】を作ります。この【脂質ヒドロペルオキシド LOOH】が過酸化脂質として体に悪さをします。
この過酸化脂質である【脂質ヒドロペルオキシド LOOH】は、皮膚のくすみやしわを作ります。
図にしたように、H2O2過酸化水素が直接メラニンを増やしてシミを作ります。また、間接的に活性酸素種ROSが「脂質を酸化」させて、シミやクスミを増やします。ほかにも複雑な道筋をたどって、炎症や線維増加を起こします。それらがシミ・シワにつながります。これらの活性酸素種ROSを減らすから「亜鉛」はお肌に良いのです。
亜鉛が活性酸素種ROSを減らす理由としては、【ジンク・スーパーオキシドジスムダーゼ Zn-SOD】が細胞質内の活性酸素種ROSの一種であるO2-スーパーオキシドを減らすこと、亜鉛-グリシン配位化合物がメタロチオネインと【グルタチオン(GSH)】と言った抗酸化物質を増やすからです。
最後に、亜鉛が多く含まれているものを紹介します。
覚え方は...
1. 海の精力をつける食材(牡蠣・うなぎ)
2. 味に癖のある洋食材(もも肉、レバー、卵黄)
3. 伝統的和食材(大豆・そば・ゴマ)
4. ちょっと優雅な嗜好品(緑茶・抹茶・カシューナッツ・アーモンド)
外でのレジャーや仕事で皮膚に負担をかけたり、ストレスで疲れたな!? と感じたら、少しリッチな気分でオイスターバーでナッツを頼みながら、亜鉛補充してみませんか?
ちなみに、血液中の亜鉛が足りなくなると、皮膚や口・喉の症状や体の不調が増えてきます。
具体的には、舌の痛みや味覚を感じなくなったり、食欲がなくなったり、数か月にわたる下痢や貧血、生理が来なくなったり、風邪をひきやすくなったり、暗いところで目が見えなくなったりします。一方で、取りすぎると嘔吐や下痢、貧血を引き起こしますから、注意してくださいね。
今日の覚えてほしいことは、【活性酸素種ROSは炎症や線維増加を起こす】です。
今回からキーワードのまとめをします。
1 【悪】紫外線:長波長紫外線UVA、短波長紫外線 UVB
2 【悪】活性酸素種:・O2-スーパーオキシドアニオンラジカル、1O2 一重項酸素、H2O2過酸化水素
3 【悪】過酸化脂質:脂質ヒドロペルオキシド LOOH
4 【善】抗酸化物質:ジンク・スーパーオキシドジスムダーゼ Zn-SOD、グルタチオン(GSH)
注:ここで記した【善】【悪】の判断は、抗酸化にもっていくものを善、酸化を進める物質を悪と、理解しやすいように便宜的に分けました。
たとえば、今回、シミ・くすみを増やすという意味で、紫外線・過酸化水素を悪者扱いをしましたが、これらには殺菌作用があり日常生活に大変役立っています。
出典:薬学雑誌、アンチエイジング医学、生物試料分析、Functional Food、BIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS、炎症と免疫、日本衛生学雑誌、ICUとCCU、外科と代謝・栄養
MSN 女ブログ